ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ『星月夜』/ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク)
「絵画」と言えば、みなさんどんな絵を頭に浮かべるでしょうか。
ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』
ゴッホ『ひまわり』
モネ『水連』
ピカソ『ゲルニカ』
ムンク『叫び』
ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』
絵にさほど興味のない人でも、どこかしらで見たことのある絵でしょう。
これは全部、油彩で描かれています。
同じ油絵でも、絵によってイメージが全然違いますね。
「絵画」と言えば、比較的「油絵」を目にすることが多いのではないかと思います。
でも、小学校の時、ほとんどの方が「水彩画」を経験されているのに比べると、
「油絵」を実際に描かれたことのある方は少ないでしょう。
なんとなくハードルが高い気がしていませんか?
実際、油彩とは、どんなものなのでしょう。
今回は、油彩について語りたいと思います。
その後は、油絵についてもっと詳しく
道具などについても記事にして行きたいと
思っているので、
これからのあなたの画家人生に役に立てれば嬉しいです。
油彩画とは!
油彩とは、読んでそのままの通り「油絵具で描く」こと。
また、その絵です。
油絵具って、画材屋さんに行けばチューブに入って売ってるし、
それで描けば「油絵」になるんだろうけど。
油絵の特徴や魅力など、詳しくお話していきましょう。
油絵具ってどんなもの?
油絵具は、顔料を油で練った絵の具です。
水を一切含まず、薄める時には油を足して薄めます。
そして、油の成分が固まることで、顔料がキャンバスに定着します。
油絵に食用油はつかいませーん。
絵を描くのに使用されるのは「乾性油」、
それから「揮発性油」というものです。
◆乾性油◆
文字を見ればなんとなくお分かりでしょう。
そうです。乾燥する性質のある油ですね。
乾性油にも「リンシードオイル」「ポピーオイル」の2種類があります。
「リンシードオイル」は、油絵に使うものでは最もスタンダードな油です。
成分は、亜麻の油「亜麻仁油」です。
強い黄色をしています。
「ポピーオイル」はケシの油で出来ています。
リンシードオイルよりも、やや澄んだ、控えめな黄色をしています。
乾燥速度がやや遅く、乾いた部分の強度がリンシードオイルより、
やや劣ります。
白い絵の具を綺麗に出したい時や、仕上げの使うと良いでしょう。
◆揮発性油◆
これは、ネバネバした乾性油の薄め液として使います。
揮発性油にも「テレピン油」「ペトロール」と2種類があります。
「テレピン油」は松科の樹木からとれる脂で作られます。
ペトロールよりもスタンダードなものです。
臭いがかなりきつく、ツーンとして嗅いでいられません。
必ず換気がしっかりとできる場所で使ってくださいね。
「ペトロール」は石油から作られています。
テレピン油よりも揮発速度は遅く、臭いもマシです。
揮発性油は、水彩画でいうところの水の役割で、
水彩画の経験から初心者はついつい揮発性油に頼ってしまうかもしれませんが、
まずは乾性油のみを使って描いてみてはどうでしょう。
揮発性油は「溶かす」、
乾性油は「延びる」役割です。
乾性脂のみを使うことで、
油彩の醍醐味『延びる』感覚を大いに発揮することができます。
油彩の魅力とは!
存在感
油絵の一番の魅力は「存在感」ではないでしょうか。
色々な絵画の中でも、色の鮮やかさや深み、
流動性、重圧感が表現できる絵画です。
絵の具に油を混ぜて、濃度や延びを自在に作ることで、
作品に色んな表情を見せてくれます。
濃くボッタリと載せることで大胆さを表現したり、
迫力のある作品が生まれます。
また、絵の具をよく延ばして繊細な描画で表現することもできます。
立体的にも平面的にも見せてくれ、
たくさんある絵の具の中でも、表現が広がる画材だと思います。
グラデーション
油絵具は乾燥するまでにとても時間がかかります。
これはデメリットでもありますが、大きなメリットでもあります。
乾燥までに時間はたっぷりあるので、じっくり作ることができます。
絵の具が全く乾かない内に、筆で馴染ませながら作れるので、
簡単で綺麗に仕上げる事ができるのです。
修正が簡単
隠ぺい力が高いのが油彩の特徴です。
隠ぺい力というのは、下の色を覆い隠す力です。
下の絵の具が乾いていれば、上から全く別の色を載せても影響しませんし、
乾く前だったら、一旦載せた絵の具を拭き取って、書き直すことも可能です。
にじむ心配がありません。
丈夫で長持ち
油彩は、油が固まってカチカチになります。
乾いてしまえば、光や湿気に対しての耐久性が強いのが特徴です。
デメリットは?
初期費用
「さて、油彩を始めてみよう!」
と思った時、初期費用の高さに少々躊躇してしまいますね。
そうですね~・・
道具を一式揃えるとなると・・
10000円~30000円くらいでしょうか。
それ以外にも、溶き油・クリーナー・キャンバス、
筆・ペインティングナイフは、好みの物を何種類か揃えたいものです。
ちょっと試してみようかな~って方は、
絵の具12色くらいで、初心者用の基本セットが
6000円~8000円くらいでもあります。
筆やナイフやパレットなど一式セットになっています。
スペース
場所は、そこそこの広さが必要です。
イーゼルを置いたり、部屋が汚れるのでシートを敷いたり。
乾かないまま何日もかけて描くので、片づける事ができません。
そのまま置いておけるよう、1部屋必要ですね。
乾くのが遅い
油彩は乾燥にとても時間がかかります。
色や季節にもよりますが、1週間くらい経たないと手についてしまう状態です。
乾いてから塗り重ねていく場合、完成までにかなり時間がかかります。
ちなみに、完全に乾くには、半年以上かかるとも言われています。
臭い
絵の具自体の臭いはさほど気になりません。
絵の具を溶かすための揮発性油の臭いがきついです。
絵の具の説明で詳しくお話ししましたが、
揮発性油のなかでも「テレピン油」はかなりきつい臭いで、
鼻にツンときます。
充分に換気のできる部屋で使いましょう。
「ペトロール」はかなり臭いが抑えられた物も出ています。
臭いの事も考えて選びましょう。
筆を洗うクリーナーは無臭のものも出ています。
乾燥前の油絵と同じ部屋で生活するのは、
少々辛いものがあります。
やっぱり、制作用の部屋が必要ですね。
片づけ
水彩画なら、作業が終わって一気に洗面所へ!
・・・ですが、油彩は水では落ちません。
汚れた物は、まずは拭き取って、油で落として・・・
結構手間がかかります。
最後に
デメリットを色々並べてしまいましたが・・・
油絵は時間をかけてじっくりできるし、
何度でも塗り直しができます。
なので、実は絵画初心者にはおすすめなのです。
始めるには少々勇気がいるかもしれませんが、
簡単な小ワザで、初心者でもなかなかそれなりの絵が描けるものです。
趣味で油絵が人気なのは、そんな理由からかもしれません。
浮気しそうになってしまう弱い自分がいます。(泣)
わかりやすく解説!【絵画の技法】油彩(その2・道具)では、
油絵を始めるための準備について、紹介していきます。
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